<恵那山(えなさん)>

恵那山(2191m)

ルート恵那神社→(前宮ルート)→恵那山→(前宮ルート)→恵那神社(登山道地図)
登山日:2004年9月12日
登山口:岐阜県中津川市 map fan
天候:晴れ/くもり
テーマ:いにしえの前宮ルートをたどる
ガイドブック:『山と渓谷』2003年8月号(P55)
同行者:単独
時間記録:歩行時間 登り:6時間、下り:2時間35分
05:50 恵那神社
06:10 登山口
07:05 五合目
08:20 中ノ小屋跡
09:20 八右衛門の頭
10:30 十六合目
11:50 恵那山頂避難小屋
13:10 恵那山頂避難小屋
13:40 十六合目
14:10 八右衛門の頭
14:30 中ノ小屋跡
14:55 五合目
15:25 登山口
15:45 恵那神社
仕切り線

【恵那山前宮ルートについて】

恵那山といえば、日本アルプスを世界に紹介したウォルター・ウェストンも登頂したことが有名である。ウェストンが日本に滞在していたのは1890年頃であるが、現在でも各地でウェストン祭が行われているので、この事実を知る人も多いだろう。中津川市でも「ウェストン記念恵那山集中登山」(日記)や「ウェストン祭」が行われている。そしてウェストンが『日本アルプスの登山と探検』の恵那山の項で紹介したルートが「前宮ルート」である。台風などの影響ですっかり廃道となっていたが、2003年秋に中津川山岳会の整備によって一般登山道として復活した。
復活してからは間もないため、まだガイド本には紹介されていないが、唯一(?)雑誌『山と渓谷』2003年8月号の特集「発見!秘密の極上コース」に紹介されている。中津川市山岳連盟の金井さん、「恵那山と富士見台を愛する会」のまささん、「@恵那山」の足立さんら、BIGな方々が登場しているので必見である。またインターネットでも詳しい資料が手に入るので、上手に情報収集をしてこの歴史の道を楽しんでもらいたいと思う。
標準コースタイムは約11時間40分と長いので、日帰りするならば事前のトレーニングはもちろん、早朝の出発が必要とされる。

【アプローチ】

多治見からR19、R363で川上地区に近づくと看板が立っているので分かりやすい。国道から離れて「中津川」にかかる橋を渡り、名水・川上スケート場跡・ウェストン公園と過ぎると黒井沢林道の入り口に着く。ここで直進すると黒井沢ルート、左折すると前宮ルートの登山口に行くことができる。また恵那神社の案内板に従がって行けば前宮ルートの登山口に行けることも付け加えておく。棚田を過ぎると恵那神社に着き、ここに砂利の広場があるので車を置かせていただいた。多治見から50キロ、90分で到着。

【恵那神社前宮】

恵那神社 (現地解説板の恵那神社由緒記より)
恵那山:恵那山は恵那郡第一の高峯にして(二一九〇米)神代の世 天照皇大神の御胞衣を比の山頂に納めし故恵那山と謂い恵那神社の鎮座せられたるも神代のときなり。古事記、日本書紀に日本武尊この山に御登拝の記事あり
恵那神社:恵那山の頂上崇霊の地にありて社殿は流れ造り 祭神は伊邪那伎大神 伊邪那美大神なり
(中略)
攝社(恵那山頂に鎮座):葛城社(一言主大神) 富士社(木花咲開姫大神) 熊野社(速玉男命) 神明社(天照大神、豊受姫大神) 劍社(天一箇命) 一宮社(猿田彦大神)
前宮:恵那山頂に在る本社及び六社の摂社の祭神を奉祀す
例祭日:9月29日
(以下略)

【登山口】

登山口 樹齢約1000年と言われる夫婦杉(女男杉)と、伊邪那伎(イザナギ)大神&伊邪那美(イザナミ)大神の石像を見て恵那神社を出発する。境内にはトイレがあったので使わせていただいた。
釣舟草(ツリフネソウ)や節黒仙翁(フシグロセンノウ)など旬の花で賑やかな林道を歩くと20分ほどで前宮ルートの登山口に着いた。登山口周辺は数台駐車可能で、今日は3台止まっていた。登山ポストに計画書を提出して、沢にかかる橋を越えるといよいよ登山道となる。

【5つのピッチ】

前宮ルートの行程は長い。「@恵那山」の前宮ルート案内を読み、小生も5つのピッチ(=行動の一区間)に分けて計画を立てた。第1ピッチは登山口から五合目まで、第2ピッチは五合目から中ノ小屋跡地まで、第3ピッチは中ノ小屋跡地から八右衛門の頭(1801m三角点)まで、第4ピッチは八右衛門の頭から十六合目まで、第5ピッチは十六合目から山頂までとした。距離的にもちょうど良い分け方だと思うが、各ピッチで雰囲気が異なるので非常な明快な区切り方だと思う。

【心明霊神】

早朝の中の樹林帯は薄暗くて気持ちの良いものではない。歩き始めると山路の杜鵑草(ヤマジノホトトギス)が少し見られたが、花はすぐに見られなくなる。キノコを眺めながらひたすら歩くのみ。第1ピッチはウォーミングアップである。
いったん沢から離れるが再び沢と合流する。この2つ目の沢が対東沢で、「心明霊神」と彫られた石碑があった。沢に橋などは何もなかったが、水量が少なかったので簡単に渡れた。
所々踏み跡が薄いが、迷うほどではない。うっそうとした林の木々が笹に変わって周囲が明るくなると第1ピッチの終点、五合目であった。新しそうな看板と石柱があった。
対東沢 五合目

【枯大檜と不動明王像】

五合目から少し歩くと前山(日記)方面の展望が楽しめた。第2ピッチも第1ピッチと似たような雰囲気で木々のうっそうとした登山道だが、急登があり標高稼ぎのピッチといった印象を受けた。枯れた大木があり徐々に気持ちが高まる。中でも白骨化した檜が特に大きく印象に残った。ここまで来れば第2ピッチの終点、中ノ小屋跡は近い。
中ノ小屋跡の広場はなかなか広く、休憩場所にはちょうど良かった。昔の小屋の資材や屋根がまだ残っており、すぐ近くでは銀竜草擬(ギンリョウソウモドキ)が見られた。また少し頂上よりに斜めに裂けた大岩(護摩堂跡?)があり、不動明王像が祀られていた。
枯大檜 不動明王像

【笹漕ぎの第3ピッチ】

不動明王像を過ぎてここから第3ピッチが始まる。全行程でこのピッチが一番辛かった。登山道は尾根に沿った道となり、橋ヶ谷山(日記)方面や川上集落方面に展望が開けて楽しいのだが、笹が非常にうるさい。単なる笹漕ぎならば我慢できるが、朝露で笹の葉の全面が濡れていて体の上から下までびっしょり濡れてしまう。また追い討ちをかけるように蜘蛛の巣が顔にかぶさってくる。途中で帽子と雨具で完全武装着したが、心身ともに非常に疲れた。
ボロボロの布切れが縛り付けてあるのを見ると、第3ピッチの終点1801m三角点は近い。この三角点ピークは「八右衛門の頭」とか「空峠」と呼ばれているようだ。「八右衛門の頭」の名の由来は八右衛門谷を詰めたピーク(頭)ということであろう。
川上集落方面 笹漕ぎ

【大満足の第4ピッチ】

三角点のピークを過ぎると勾配が緩い地形となる。日当たりの良い尾根なので秋の麒麟草(アキノキリンソウ)や蔓竜胆(ツルリンドウ)などの花もよく見かける。今まで花が少なかったし笹漕ぎで疲れていたので、休憩も兼ねて雨具を脱いで撮る撮る撮る。
正面にはなだらかな山頂の恵那山が大きい(右下写真)。コンパスを使って同定しなければどこが最高点だか分からない。
登山道 正面に恵那山

【物見の松】

物見の松 前宮ルートの物見の松は、恵那山の八景(前社のホトトギス・物見の松の眺望・行者越しの奇岩・空八丁の古樹・頂上の紅葉・富士山の日の出・太平洋の落日・天竜川の水光)の1つなのだそうだ。松は枯れてしまっているが、大岩に登って枯れ松の隣に立てば前山と中津川市街地方面の素晴らしい展望が得られる。

【快適尾根歩き】

季節は初秋。気の早い植物は紅葉が始まっていた。花は少ないが実や種が多い。立ち枯れた木々の尾根歩きで気持ちが良かった。
恵那山の忘れな実 快適な尾根

【行者越え】

恵那山は役行者(=役小角:えんのおづぬ)によって開山されたという説があるそうだ。当時は最大の難所であったという「行者越え」は前宮ルートの見所の一つ。現在は全く危険な箇所は無い。岩には役小角像がたたずまれていた。
足元にたくさん生えている梅花黄蓮(バイカオウレン)の葉の中、ときどき三葉黄蓮(ミツバオウレン)も見つけてうれしい。空八丁の最後の急登は苦しいところだが、第4ピッチは全体的にたいへん楽しく、あっという間に十六合目に着くだろう。
前宮ルートは山頂まで二十合に区切られており、当時の石柱が五合目、十三合目、十四合目、十六合目と発見されているようだ。
行者越え 十六合目

【奥美濃名山との共通点】

ところで、前宮(前社)、前山、二十合目(あるほど大きい)とくれば美濃の山ファンなら奥美濃の能郷白山(日記)が思い浮かぶはず。山頂に社があり、別名が権現山であることや、前社で古き伝統(能や文楽など)が守られていることも共通点である。

【美林の第5ピッチ】

第5ピッチは第4ピッチとまた雰囲気が変わって美林の中の登山道となる。笹の高さは膝くらいまでとなり、もう笹ヤブが気になることは無い。
途中から二重稜線のような地形となる。現在の登山道は昔の登山道と違うのか、進行方向の右側に薄い踏み跡とペイントが現在の登山道と平行に走っていた。二重稜線の鞍部に沼地があったが、これが垢取池の跡なのかどうかは分からない。沼の形が長方形だったのではじめは建物の跡かと思ったが、こんなジメジメしたところに建物なんか普通は建てないだろうし、やはり以前は湿地か池だったのだろうと想像する。
美林の登山道 垢取池?

【一宮社】

幻の落合ルートと合流してロープ場を登りきると一宮社(一ノ宮社)。前社から歩いてきて一番はじめに見る神社だ。
落合ルート合流点 一ノ宮神社

【一宮社参道】

一ノ宮神社までくると踏み跡がしっかりとしてきて、登山道脇では舞鶴草(マイヅルソウ)やさくらんぼのような竹縞蘭(タケシマラン)の赤い実が登山道を彩っている。蟹蝙蝠(カニコウモリ)の花は既に終わっていた。
植物と美林がきれいだったが、「一般登山者立入危険」の案内板も気になった。「旧登山道は廃道 危険」の看板を見ると神坂峠ルートと合流した。
一宮社参道 神坂峠ルート合流点

【稜線の植物】

稜線は沼地のようなドロドロ登山道なのではじめて来た人は驚いてしまうのではないかと想像する。しかし足元から目線を横にずらすと御前橘(ゴゼンタチバナ)の実がたくさん見られた。芹葉塩釜(セリバシオガマ)も一箇所で確認できた。針蕗(ハリブキ)は見れば見るほど面白い。登山道から離れたところでは梅草(バイケイソウ)の葉が印象的だった。
御前橘 芹葉塩釜

【恵那山頂:奥宮】

奥宮 山頂避難小屋に着く。すぐに小屋裏の大岩に登るがガスっていて展望はまったく無かった、残念。小屋の中で山頂ノートに記帳し、三角点に向かいながら社めぐり。三角点でも記念撮影したが、最後はやはり奥宮(本社)で記念撮影を行い、無事に登頂できたことをお祝いした。奥宮には伊邪那伎大神と伊邪那美大神の2つの石像があると予想していたが1つしか確認できなかった。

【帰路にて】

下山はジョギングで往路を下りた。登山を始めてから山行数は約150回になるが、初めて足裏に水ぶくれができた。やはり前宮ルートは甘くないということを実感した。
ウェストン公園でウェストン像と女郎ヶ滝、秋海棠(シュウカイドウ)の花などを見て帰宅した。

【総評】


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