<籾糠山(もみぬかやま)>

籾糠山(1744m)
(天生峠→天生湿原→籾糠山→木平湿原→天生湿原→天生峠

登山日:2003年8月16日
登山口:岐阜県河合村
天候:晴れ時々霧
テーマ:高層湿原植物群落、ぎふ百山
ガイドブック:『分県ガイド 岐阜県の山』、『AG17 乗鞍・御嶽・霧ガ峰』
同行者:単独
時間記録:行き……2時間、帰り……1時間35分
(標準コースタイム:行き……1時間50分、帰り……2時間10分)
07:10 天生峠
07:30 天生湿原
08:30 木平湿原分岐
09:10-09:25 籾糠山
09:50 木平湿原分岐
10:05-10:15 木平湿原
10:45 天生湿原
11:00 天生峠


【お盆】
お盆は祖母のいる金沢に帰省した。名古屋城から兼六園まで走る「さくら道ウルトラマラソン(270キロ)」の下見を兼ねて車で行くことにした。車で金沢に行くのは初めてだがR156とR304を通れば良いので分かりやすい。行き帰りに普段は遠くて登るのが難しい富山との県境の山を登れることも魅力である。行きでは三方岩岳から間名古の頭まで縦走しようと計画していたがあいにくの雨で中止。帰りに体力的に厳しくない山に登ることにした。標高1290mの天生峠(あもうとうげ)まで車で行けてしまう籾糠山が目的にぴったりである。

【R360】
金沢を4時に出発。R156沿いの菅沼合掌集落や五箇山の観光をしながら白川村に入る。萩町地区から延びるR360に入ると後は一本道。道ははじめ木滝谷に沿っているが、すぐに天生中滝の歓迎を受ける。木滝や高滝もすばらしい滝のようであるが、車からは確認できなかった。標高を稼いでいくと、朝日を浴びた白山北縦走路がきれいに見えてきた。雲上にそびえたつ妙法山、野谷荘司山、三方岩岳……、いつか行ってみたいものだ。なおR360は11月15日から5月31日まで冬季閉鎖となっているので注意されたい。途中で工事を行っているので通行止めも多いそうだ。
天生中滝 白山北縦走路

【天生峠】
天生峠には7時に到着。金沢から92キロ。先客は車1台のみ(写真は帰りに撮ったもの)。泉鏡花の代表作『高野聖』では昼なお暗い原生林の道として紹介されているそうだが、今日では国道が通っていて、峠も舗装された広場となっていて当時の面影は全くない。それでも東山魁夷が唐招提寺の障壁画を描くにあたり、上段の間の「上雪」の絵は天生峠での写生が元になったと言われているとのこと。この辺一帯は天生県立自然公園となっている。
天生峠 登山道入口

【月が瀬伝説】
天生峠と籾糠山を語る上で月が瀬の伝説と飛騨の匠の伝説は欠かせない。
天生峠を東に下ると小鳥川の川筋に出る。そこに余部という名の小さい村があった。その村のはずれにしのぶという名の娘がいた。いい娘だったが器量が悪く二十歳になっても結婚できずにいた。ある月夜、年に1回行われる盆踊りに出かけた。しのぶは若い衆の側まで行ったがどうしても足が向かない。いつのまにか踊りには背を向けて暗い山道に歩いていた。空にはびっくりするほどの大きい丸い月が出ていた。ある谷川の橋の上でしのぶは美しくなれるよう月に祈った。そして水に映った丸い月影を壊さないように手のひらにすくって。こっくりと飲み込んだ。目をつむっていると月の光が腹の底に落ちて満ち足りた思いがした。それからしのぶはきれいになったが、さらに不思議なことに子供を身ごもった。しのぶは天生峠の近くに家をつくりかわいい子供を産んだ。それを知った村の若い衆がその橋の上に行ってみたところ、空に月があるのに水には月影が映ってなかったという。月がしのぶに子を与えたのは本当だとみんなは思い、このあたりの村を「月が瀬」と呼ぶことにした天生峠の「天生」もこのことがもとで名づけたという。天生峠の近くで育った男の子は、大きくなって都に出て「飛騨の匠」になった。『岐阜県の伝説』より

【左甚五郎伝説】
『ぎふ百山』や『AG17』に籾糠山の山名由来となる飛騨の匠伝説が紹介されていた。多治見図書館でさらに調べようと思ったが、左甚五郎の伝説を紹介する本は見つからなかった。詳しく知るには地元で調べないとダメかもしれない。逆に月が瀬伝説はどの本にも載っていたので、こちらはかなり有名な話なのだろう。以下『ぎふ百山』より転載。
生まれながら器用な甚五郎は、天生峠近くの山中で木の人形を作り、入魂し、山地を開墾させ、田を造り稲作をはじめた。秋の収穫期には自作の臼で籾をすり、玄米と籾殻を分けるに風を利用し、唐箕で振り落とした。風に乗った籾殻は遠く向かいの山にうず高く積もり、円錐型の籾糠の山となった。のちに、甚五郎の手助けをした和製ピノキオを埋葬した山を人形山というなど、伝説にまつわる地名も近くに現存している。
なお『AG17』では甚五郎は月ヶ瀬伝説のしのぶの子ということになっている。

【天生湿原へ】
よく整備された天生峠から天生湿原に向かう。廃れた展望台から木のトンネルをくぐるといよいよ山道になる。それでもよく踏まれた道なので快適である。途中「熊が出るので注意」の看板を見てやおら熊鈴を取り出す(^^;)

【天生湿原】
登山道脇の白い花を見ていると天生湿原に到着。東回りと西回りと分岐になっていて行きは東回りで行く。日光黄萓(ニッコウキスゲ)はほとんど終わっていたが、小紫陽花(コアジサイ)や糊空木(ノリウツギ)などがよく咲いていた。
天生湿原入口 天生湿原

【天生湿原】
湿原らしい遊歩道を歩いているとシャガを小さくしたようなかわいい花に出会った。たくさん咲いていたので今が見頃なのだろう。白髭草(シラヒゲソウ)というようだ。花弁の縁のもさもさを髭にたとえたようで面白い!
遊歩道 白髭草

【花の登山道】
登山道 天生湿原を過ぎても地面が湿地状態になっている個所があり、切り株を置いた道もあった。昔を思い出すアスレチック気分(^^)登山道の脇には紫色の河内附子(カワチブシ)や黄色の花、白い花が多数見られて彩り鮮やか。
河内附子 天生湿原の忘れな花

【原生林】
原生林に入る。途中で案内板の矢印がどっちを示すのか分からない三叉路にぶつかった。沢を渡る道に行ったら5分ほど行った所でロープが張ってあったので間違いだと気がついて戻った。カツラの大木を見るとジメジメとした林の中を歩く。立派な木が多くて飽きなかった。
標識 大木

【籾糠山へ】
この登山道は中部北陸自然歩道にも組み込まれているようだ。河合村の整備も頻繁にされているようで案内柱が多い。「○○まであと□□km」と書かれているので初心者にはありがたいだろう。沢沿いに歩くので何度も沢を渡るのだが、「←木平湿原1.3km、←籾糠山1.3km」と書かれた木平湿原(こだいらしつげん)への分岐を見ると最後の沢を渡ることになる。 沢道

【籾糠山】
沢から離れると急登である。出発時は綺麗に晴れていた山頂も何時の間にかガスがかかっていて周囲の展望が全くない。尾根に出ると道にぬかるみがひどく、ひどいところでは足が沈まないように切り株などが置いてあった。山頂への最後の急登を終えてもガスは晴れず。しばらく休憩するもガスが水分を帯びた霧に変化し、皮膚に水滴が突き出したので下山を決めた。籾糠山山頂は遮るものがないので、晴れていれば最高の展望だろう。残念。猿ヶ馬場山への踏み跡がついていたが、熊が多いのでここから先は安易に行くなというようなことが書かれていた。
登山道 籾糠山山頂

【木平湿原へ】
籾糠山から木平湿原の分岐まで一旦降りる。山頂直下の尾根から木平湿原方面に向かって廃道と思われる道が確認できたが今日はおとなしく往復した。木平湿原に向かう道もなかなかにぎやかでこれから咲く杜鵑草(ホトトギス)のつぼみなどが見られた。木平湿原は天生湿原よりも高い位置にあるので、登りが入る。叙情に登山道は笹道になり、木平湿原に到着。
杜鵑草? 登山道

【ダケカンバの大木】
ダケカンバの大木 木平湿原につくと「←ダケカンバの大木」の看板が目に入ったので先にそちらに行った。行き止まりに見事な大木があった。

【木平湿原】
木平湿原は天生湿原とはまた違った雰囲気だった。赤色の毛氈苔(モウセンゴケ)が目立つ。はじめて見たが食虫植物だと知っていたので少し触らせていただく。確かにベトベトしていた。柵などが何もなくていいなと思った。毛氈苔と一緒に小さい花が咲いていたが、耳掻き草(ミミカキソウ)という。
木平湿原 毛氈苔

【天生湿原へ】
よく踏まれた道を歩いて天生湿原へ向かう。行きは東回りだったので帰りは西回りにした。途中で河合村のパトロールの方に出会った。少し話したが、今年は登山客が少ないそうだ。湿原の中央には「飛騨匠堂」と書かれた神社があったので立ち寄った。
登山道 神社

【パトロール隊】
天生峠に戻るとたくさんの車が止まっていて人気の場所だと改めて知る。河合村のパトロール隊が数名いて、「この車は君のかね?」とチェックされた。入山人数などをしらべているのだろうか?それにしても河合村がここまできちんと管理していることに驚いた。夜叉ヶ池(日記)でも地元の人がパトロールしていたが、貴重な自然を守るにはやはり人間が見回るしか手段がないか……。

【下山後の楽しみ:白川郷】
下山後は世界遺産である飛騨白川郷を散策した。まずは荻町城跡展望台から合掌造りを一望。麓に下りてからまず「白川郷の湯」(公式ページ)に向かう。お盆休みの関係もあり、すごい人の数で村営駐車場には入れない状態だった。小生は温泉が一番のお目当てだったのでこちらの駐車場に行ってみた。運良く1台分空いていたのでそこに駐車。久しぶりの温泉だった。その後、「国指定重要文化財和田家」や「どぶろく祭りの館」などを楽しみながら白川郷内を一周して帰った。帰省関係でR156と東海北陸自動車道は八幡町から、R41に逃げても金山町から名古屋方面は渋滞していて参った。
城山展望台より 国指定重要文化財和田家

【総評】
・登山道や湿原で花や立派な原生林がたくさん見られて楽しかった。
・今回はガスで見られなかったが、籾糠山山頂の展望は素晴らしいだろう。
・河合村の方々がパトロールしていた。
・案内が多数あり初心者でも安心のコース。階段や柵などがないのもうれしい。

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